食品ロス削減ガイドブック_2022
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NACS(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)は、「消費者利益と企業活動の調和を図り社会に貢献する」ことを目的とした、消費生活の専門家集団です。食生活委員会では、持続可能な社会を構築するための取り組みの一環として、食品ロス削減推進に特化した活動を行っています。2019年、食生活委員会は、消費者としてできることを探り、啓発活動や提言につなげるため「食品ロス削減に関する消費者意識調査」※1を行いました。調査では、約9割の人が食品ロスを意識しながらも、約7割もの人が食品ロスを出していることがわかりました。廃棄理由は、「消費期限切れ」「食べ残し」「賞味期限切れ」の順に多く、「期限切れ」の多さが目立ちます。コメントには「腐った」「カビが生えた」というものもありました。食品の期限表示を正しく理解し、家の在庫を確認してから購入するといった行動が、食品ロスを減らします。こうした食品ロスに関する知識や情報は、テレビから得ている人が多く、インターネットや新聞を情報源としている人も一定数いますが、若い世代を中心に関心の低い人が2〜3割と目立ちます。多様な手段で知識や情報を伝えていくことが課題です。2020年7月には「新型コロナウイルス感染症の食生活への影響」※2についてのWEB調査を行い、コロナ禍での家庭の食品購入から廃棄時までの影響を調べました。緊急事態宣言発出により、半数以上の人が家庭で食事する回数や、一回あたりの食品購入量が増えていました。食品ロスの量が以前より増えた人はわずかでしたが、前回の調査と同様、7割近くの人が食品ロスを出しています。廃棄理由で最も多かったのは「腐ったりカビが生えた」でした。自分や家族のために食料を確保する必要のあることは確かですが、購入した食品や作った料理を捨てないためには、知識を身につけ工夫することが大切です。「新しい生活様式の下、食品ロス削減のためにできると思うこと」という質問では、「在庫を確認した計画的な購入」「食べきれる量を作る」など、少し意識すればできる行動が上位にあがりました。「フードバンクへの支援」と答えた人は少数で、コロナ禍で生活困窮者がクローズアップされても、フードバンクやフードドライブは身近な存在とは言えないようです。調査に答えることは、回答者が自分の食生活を振り返るきっかけとなります。コメントからは、後ろめたさを感じつつ、どのようにしたら捨てずにすむかと模索する消費者像が窺えました。また「自分で調理をする回数が増えた」だけでなく「自分以外の家族も調理するようになった」というコメントもあり、コロナ禍は、食品ロス削減を自分事として考え、実践していける人と機会を増やしたとも考えられます。昨今のライフスタイルの多様化に伴い、時間の有無、料理の得意・不得意、家族構成などにより、食生活において一人一人が実践できることは違ってきます。そこで、委員会では「食品ロス削減をあなたの手で 家庭の食品ロスを削減するためのヒント集」を作成しました。誰もが自分にできることを見つけ実践するための啓発資料です。食品の期限や保存の知識、忙しい人や調理が面倒と思う人も試したくなる「ロスないレシピ」等を紹介しています。ヒント集を基にした動画「食品ロス削減をあなたの手で コロナ禍を超えて」も配信しています。(https://www.youtube.com/c/nacs_channel)多くの方にご覧いただき、毎日の暮らしに活用されることを願っています。NACSの各支部でも、地域での食品ロス削減啓発講座を行っています。小学校のワークショップで、児童から「食べ物を簡単に捨てない」という意見が出たり、講座の参加者に野菜使い切りの工夫を教えていただいたりと、いつも新たな気づきを得ています。こうしたコミュニケーションが一人ひとりの力を大きな力に変えていく源であると考え、これからもNACSは、「食品ロス削減」のため、様々な取り組みに尽力してまいります。※1、※2:https://nacs.or.jp/renkei/lifepproblem/一人ひとりの力を、大きな力にNACS(公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)藤原以久子

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